記憶力のマラソンはまさに苦行だった
1時間ひたすら記憶し続ける
メモリースポーツ(記憶力競技)の種目の紹介の記事でも軽く書きましたが、世界記憶力選手権には1時間かけて記憶する競技があります。
世界記憶力選手権って何をするの?記憶力競技の内容に答えるよ!
しかも1種目だけではなく2種目もあるのです。
1つは「ONE HOUR NUMBER」と呼ばれる種目で、1時間ひたすらランダムに並んだ数字の羅列を記憶していきます。
こんな感じでずらーっと、数字が並んでいます。
そしてもう1つは「ONE HOUR CARDS」と呼ばれる種目で、1時間ひたすらシャッフルされたトランプを記憶していきます。
これが本当にキツイんです。。。
日本を代表するメモリーアスリートの青木健さんからも、「この種目は苦行でしかない」とは聞いていましたが、
実際に経験してみると、まさに苦行でした!
ずっと記憶し続けるのはしんどい
記憶はインプットの作業
1時間というとそんなに長く感じない人もいると思います。
TOEICの試験時間は2時間ですし、1時間より長い試験なんてたくさんありますよね。
1時間くらいで何がしんどいの?と思う人もいるともいます。
しかし・・・それが違うんです。
テストというのは今まで学んだことや覚えたものをアウトプットする作業だと思います。中には自分の考えをまとめたりするものもありますが、基本的にはアウトプットの作業です。
しかし記憶力選手権ではずっとインプットの作業になるのです。
ずっとノンストップでインプット(記憶)し続けるのは、けっこうキツイです。
ひたすら1時間数字を記憶したり、ひたすら1時間トランプを覚え続けなければいけないのです。
まさにマラソンのように長い道のりを黙々と走り続けなければいけません。
記憶の保持にも脳のリソースが必要
記憶をずっと保持し続けなければいけない
インプットし続けることがしんどいのは、覚えたものをずっと保持しておかないといけないというものもあります。
例えば5分で数字を100桁覚えられるからといって、1時間だと単純に12倍の1200桁を記憶できるかというと、そう単純にはいきません。
記憶する量が増えれば増えるほど、その記憶を保持しておかなければいけないので、記憶に使える脳のリソースが少なくなってきます。
脳のリソースを記憶することだけに費やすのではなく、記憶したものを保持しておくのにも脳のリソースが必要になってきます。
記憶する量が増えれば増えるほどだんだんと苦しくなってくるのです。
食事でも食べ続けるのはキツイ
食事に例えると分かりやすいと思います。
例えば5分でハンバーガーを2個食べることができたとします。
では1時間で24個食べることができるかといえば、難しいですよね。
お腹も膨れてきてだんだん苦しくなってくると思います。
記憶力競技でもこれと似たようなことが起こるのです。
HiRo
時間とともに記憶が薄れる
復習が欠かせない
これが大食い選手権なら、食べた分だけ全てカウントされます。
10個食べれば記録は10個。15個食べれば15個と、苦しくなっても食べれば食べた分だけカウントされます。
しかし記憶力選手権の難しいところは、記憶したと思っても、時間の経過とともに記憶もどんどんと薄れていくというところです。
「1時間ずっと記憶し続けていたけど、もう最初の頃の数字は忘れてしまった…」
なんてことになっては意味がありません。
そうならないためにもキリのいいところで適度に復習をするのです。
記憶がちゃんと残っているか復習をしてから、また先に進むようにしているのです。
HiRo
集中力を切らすことができない
ちょっとしたミスが命取り
さらにこの種目の厳しいところは一瞬たりとも気が抜けないところです。
例えばトランプを覚える種目では、途中でトランプの並びを逆に記憶してしまったとします。2枚の並びが逆なだけで、残りの50枚は正解だったします。
点数は50枚分になるかと思いきや、なんと0になるのです。
その1パックは丸々点数が入らなくなります。
数字でも同じで、1行に40桁あるのですが、数字が1つでも違えば点数は半分になり、2つ違えば0になります。
40桁のうち38桁正解していたとしても2桁違えば、その1行の点数は0ということです。
ちょっとした油断が命取りになるので、ミスをしないようにずっと集中力を切らすことができないのです。
午後の最後の種目として行う
脳のスタミナ切れを実感
ここまででもこの種目のキツさが少しは分かってもらえると思いますが、この種目のさらにキツイところは午後の最後の種目として行うところです。
午前中にも他の種目を行い、午後にも他の種目を行って、すでに脳のスタミナも集中力もかなり消費しているなかで、このマラソン種目が始まるのです。。。
陸上競技に例えるなら、マラソンを走る前に、100メートルを走ったり、高跳びしたり、砲丸投げをしているようなものかもしれません。
でもそんな状況の中で行うのです。
まさに苦行でした!
もう25分を過ぎたあたりから、明らかに頭が回らないのを実感してきますし、ウィダーinゼリーを飲んでエネルギーを補給しても、脳のスタミナがどんどんなくなっていくのが分かります。
記憶のペースもガクッと落ちてきましたし、40分を過ぎたころからは冗談抜きで本当に意識が朦朧としていました。
HiRo
もうあまり無理して先に進まず、ここまでの記憶が飛ばないようにだけ気を付けていました。
記憶の時間よりも長いリコールタイム
1時間の記憶が終わって、折り返し地点
1時間の記憶タイムが終わって、ようやくこれで一息つける・・・
ってわけにはいきません。
1時間かけて記憶したものを、これから順番通りに解答しなければいけません。
ここがようやくマラソンの折り返し地点みたいなものです。
リコールタイム(解答時間)は2時間
リコールタイムと呼ばれる解答時間は2時間あります。
そうです、記憶する時間よりも長いのです。
メモリーアスリートたちはみな数字やトランプをイメージに置き換えて記憶しています。
そのイメージを順番通りに頭に思い浮かべながら、それを数字やトランプへと再変換していくので、リコールには時間が必要なのです。
この時は頭の中では数字やトランプの並びが浮かんでいるのではなく、それぞれトランプや数字にあらかじめ割り当てられたイメージが並んでいます。
詳しくはこのブログのトランプ記憶や数字記憶の記事を参考にしてみてください。
リコールタイムも脳のスタミナを消耗
リコールはイメージの回収作業
イメージに変換したものが記憶の宮殿に並べられているのです。
そこで、このリコールタイムでは記憶の宮殿を歩きながら、
一つ一つイメージを回収していき、そのイメージに対応する数字やトランプを解答していくわけです。
ですのでリコールタイムも脳のスタミナをかなりつかいます。
ずっとイメージを描いていないといけませんし、気力、体力、集中力が必要です。
ふっと油断してイメージが飛んでしまったりすれば、そこでポイントをロスしてしまいます。
そうならないようにリコールタイムでも慎重にイメージを描いていき、解答を書き終えてからも何度も復習していきます。
計3時間の記憶のマラソンを走り終えて
苦行だけど・・・
記憶1時間+リコール2時間=計3時間の記憶のマラソンです。
もう終わるころにはフラフラです。。。
げっそりして競技の前と後じゃ、体重も変わっているんじゃないかと思うくらいです。
HiRo
何度も言いますが、ほんと苦行のようでした。
しかし・・・
それと同時に達成感や充実感のようなものも沸き上がってきました!
また挑戦してみたい
競技中はきつくて苦行のように感じられましたが、
終わってしばらくすると不思議なもので、また挑戦してみたいなと思えてくるのです。
自分でもほんと不思議です。
HiRo
トレーニングを積んで、脳のスタミナをつけて、今度はもう少し余裕をもって記憶力のマラソンに挑めるようにしたいと思います!